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日時:5月12日(金)14時から
場所:京都大学人文科学研究所本館1階 セミナー室1

(前回と場所が異なっております。ご注意ください。)
報告:上田和彦
報告タイトル:

「ロベスピエールの政治思想の軌跡――共通の理性から道徳的快感へーー」

【概要】
革命が展開していくなかで王権が停止され、民主共和政が創設されようとしていた時期
に「恐怖政治」が始まったことは注目に値する。主権はすでに国王にはなく、人民にあ
ることになっている。しかるに、主権を握るべき「人民」から、ある人々が排除される
のである。なぜ、人民主権が創設されようとするまさにその時に、主権者となるべき「
人民」が選別されるという事態が生じたのか。興味深いことに、「恐怖政治」が実行さ
れ、市民たちが戦々兢々としているなかで、「最高存在の祭典」が企画され、実行され
た。この祭典は、「最高存在」という神への宗教的感情によって「人民」を結集させ、
教化することを目的とした祭典であった。なぜ、人民を超越する主権者を頂点に据える
ことのない政体が目指され、社会の非キリスト教化が進められていたまさにその時に、
当時の立法者たちは、「最高存在」という超越者の宗教的権威に頼らざるをえなかった
のか。しかも、なぜ、祭典という芸術の手段に頼らざるをえなかったのか。恐怖政治に
よって市民たちを怯えさせる一方で、祭典に集まった市民たちを喜ばせて結びつける。
なぜこのようなことが、民主主義の創設期に起こったのか。

注目すべきことに、「恐怖政治」期に「最高存在の祭典」を執り行ったロベスピエール
は、革命が始まったばかりの頃には、人民の理性を信頼しており、言論の自由によって
世論が成長すると信じ、人民の判断のうえに聳え立つような権力は一切認めるべきでは
ないと主張していた。そのロベスピエールが革命の進行とともに意見を変え、言論の自
由を制限するとともに、人民の理性とは別のものに依拠して共和国を基礎づけようとす
るのである。

今回の報告では、ロベスピエールの政治思想の軌跡を辿ることによって、フランス革命
期に見出される人民主権の問題を考察する。それによって、この問題が現代においてど
のようなかたちで繰り返し現れるか、また、この問題が人文学とどのようにかかわって
くるのかを今後検討するための糸口としたい。

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